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─ 第8回 旧岩崎邸探訪─ |
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OFFICE CUBE代表 水野詩都子 |
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今回は、上野駅公園・不忍池を経て、ようやく前回辿り着いた旧岩崎邸に入っていきます。 コンドルの住宅は、日本の洋館にありがちな様式に縛られた堅苦しさや折衷的な不自然さがなく、いくつかの様式に日本的な良さを自由に取り入れて、かなり装飾的なのに自由で伸び伸びとし、アットホームで心地よい空間でした。旧岩崎邸自体は方々で紹介されているので、正面切った公式的な紹介は省き、今回ここでは特に目にとまったいくつかのステキな断片をご紹介します。 |
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| ■正面外観 |
このベランダと言うもの、本来の西洋住宅の窓に付属したバルコニーとは趣を異にして、特に日本の住宅に愛着を持つコンドルが、部屋から庭に連続する縁側の発想を活かして、鹿鳴館をはじめとする日本の洋館に多用した手法とのこと。日本を愛しただけでなく、日本の風土をよく研究した成果だったんですね。 |
| ■玄関から階段へ |
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この玄関、完全に欧米風というよりどこかアラビア風の雰囲気がありますが、玄関を入ってから入り口を振り返ってみると、繊細な透かし彫りが浮かび上がり一層その感を深くします。しかもチョコレート色の柱や梁に囲まれた、このほの暗くしっとりした気分は、日本の武家の玄関などの質実さにも通じるような気が…。 玄関を入って左に進むと明るくやや華やいだ階段ホールに出ますが、そこにいたる天井がやはり格天井(ごうてんじょう)にも似た東洋風の雰囲気の寄せ木になっています。 |
| ■2階ゲストルームを中心にちょっとモバイル |
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階段をあがって2階の主役はいくつかのゲストルームと広間ですが、こんな感じで壁紙・フローリングの床・天井のアットホームなくつろいだ調和ばかりでなく、外光による光と陰の演出がすばらしく、おそらく長時間過ごす人は光の移動を存分に楽しめたことでしょう。
職員の方によって、床や天井・壁紙などにもそれぞれの「うんちく」が語られていましたが、 この建物のもう一つのポイントは、そうした細部よりも、様々な趣の部屋から部屋へと移動していく楽しみだったのでは?と思われます。部屋それぞれに居ても、もちろん工夫をこらした変化のある空間で楽しめますが、移動していくにつれ次第に姿をあらわす次の空間へのアプローチが、この建物でなくては味わえない喜びを与えてくれます。 |
| ■サラセン風といえば |
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ところでこのベランダ、2階はサラセン風の意匠を施したてすりと説明されていますが、サラセン風ないしアラビア風の意匠は、欧米や日本の様式とも組み合わされて他にも随所に見ることができます。
下左は書斎をかいまみたところですが、質実な感じの机を囲む繊細な木のアーチが、ふとエッシャーの不思議空間に登場する同じような意匠のアーチを思い出させて、何か空間の魔術に取り込まれそうな錯角を覚えました。
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| ■和館と洋館の調和 |
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先ほどの廊下突き当たりを左折すると、いきなり質素な和風の廊下になります。当時の人はおそらくここでハレ(晴れがましい非日常)からケ(日常)にもどり、ほっとしたのではないでしょうか?
さて、面白いのはこの連結された和館と洋館の対比です。あのすばらしいベランダの裏正面が、大書院前の縁側と直角に交差し、双方の前面に広大な庭が拡がる仕掛けになっていました。樹木に遮られているとはいえ、縁側に座って洋館の余韻に浸るのも楽しいことでした。 ところでこの施設自体も「旧岩崎邸庭園」といい、解説書にも建物が庭とともに楽しめる幸せ、とありますが、現在は庭の敷地は単に広大なだけの芝生と化しており、大名庭園を踏襲してさらに広大ですばらしかったという庭に関しては、何となく無惨な印象を受けました。
こちらは質素なバンガロー風で、ゴシック様式を取り入れた「スイスの山小屋風」と紹介されていますが、校倉造風の木組みや素朴な彫刻など、本館の華麗さとは対照的です。日本人にとってこのような存在は、静かな離れや「ワビ・サビ」を求める茶室のような、もう一つのほっとする非日常空間として、受け入れやすいものだったのではないでしょうか? 今回の私なりの旧岩崎邸庭園の紹介はこれで終わります。部分のクローズアップで物足りない方もおられるでしょうが、この先はぜひ足を運んでご自分の目で確かめてみて下さい。 (2004. 9) |